讃岐の郷土料理
LOCAL CUISINE
あなごの生ずし(きずし)
伝承の背景
土庄町小江(おえ)地区は、漁業の盛んな地域です。10月〜11月にかけて底引き網漁でとれる新鮮なあなごを使った生ずしが作り継がれています。時あたかも秋祭り。伊喜末(いぎすえ)神社のお祭りには船を仕立て、家族揃ってお祭りに出かけました。当日、桟敷(さじき)で食べるのは、わりご弁当です。おいしくつかったあなごの生ずしも必ず入れました。小江地区では、男性は海の仕事(漁業)、家を守る女性があなごもはまちもおろします。あなごは刃渡り5〜7cmのあなご用の小出刃でおろすのです。使うたびに研ぐので刃がちびる(摩滅)のは早いです。そのため、祭りには必ず店を出す刃物屋から小出刃を求めます。酢でしめたあなごで作るあなごずしは、傷みにくく、秋の室温で10日ほどの保存が可能でした。はんぼ(すし桶)いっぱいに作り、上から手で押さえて固め、食べる分だけをよそっていきます。保存性は高いのですが、昔は砂糖を入れなかったため、酸っぱくて、子どもにとっては苦手な料理でした。男性が酒のあてとして、好んで食べていたようです。食べ初めは酸味としょっぱさが強く感じられますが、使用する小さいあなごは、骨を取らずにそのまま刻んで用いますので、噛めば噛むほど、骨の部分から、ほんのり甘みとうまみが感じられ、素朴なおいしさが味わえます。
伝承一口メモ
時代の流れで、近頃は、若い世代向けに、少量の砂糖や具を加える家庭が増えてきました。
レシピ
■材料(10人分)
あなご(活魚か生け)小さいもの 約600g
酢じめ用の酢 適宜
塩 適宜
【すし飯】
米 1升(1.4kg)
(あれば酒・昆布を各少々)
【すしの合わせ酢】
酢 180cc
塩 30g
砂糖 0〜160g
【あなごの下処理】
1. 生きているあなごは、氷水の中に入れてしめる(仮死状態にする)。
2. まな板の上に1.の頭を右、尾を左、背を手前に置き、目に目打ちを打ってとめる。頭のつけ根に少し切り目を入れ、背骨の上に包丁を入れながら尾まで切り、背開きにし、内臓を取り除く。さっと水で洗い流し、水気を切る。
3. 頭を除き、骨がついたまま2〜3mmの長さに刻む。
4. ボールの中に3.を入れ、少量の塩を加え、手でよく揉み込む。酢を少量加えて再び揉む。(泡とぬめりが出てくるので手でしぼり取る)
5. 4.を容器に入れ、酢をひたひたに加えて1〜2時間置く。
【生ずしを作る】
1. 米は研いでざるに上げ、1.1倍の水に、あれば酒と昆布を入れて、ふっくらとご飯をたく。
2. 小鍋に調味料を入れて弱火にかけ、混ぜ溶かしておく。
3. ご飯をはんぼ(すし桶)に移し、熱いうちに調味料を加えて混ぜる。その後、冷ましたところへあなごを加えて混ぜ合わせる。
4. すしの上からはらん(又はラップ)をし、箱ずしのように手でまんべんなく押して空気を抜く。
5. すしに飯しゃもじを突き刺して、一人前ずつ取り分ける。取り分けたすしの上に残しておいた酢じめのあなごや錦糸卵、紅しょうがをとり合わせてもよい。
レシピ一口メモ
・好みで、ばらずしのように、錦糸玉子や紅しょうがをちらしてもおいしい。
・このすしの味の決め手になるのは、あなごです。骨ごと用いるところから食べて骨が気にならない小さいもの、また、塩と酢は効かせるものの生で何日間も保存しますので、クネクネと動く元気の良いものを用います。